ある錯覚の未来 IV

第4章からはダイアローグ形式ですすんでいく。
つまり架空の反論者との対話をする形だが、フロイトの作り上げた反論者はかなりするどいところをついてくる。
つまりこれらは説明のための反論ではなく、彼自身かなり肩入れをしている「もう一つの意見」ともいえるのではないか。

この章で肝となるのは、なぜ他ならぬ父親との関係が自然を擬人化する模範となるのか、という点である。
なぜ子供にとって最初の対象である母親ではないのか。

しかし父親への関係には独特の両価性(アンビヴァレンツ)が付きまといます。以前の母親への関係ゆえか、父親自身がひとつの危険でした。父親は憧れと賛嘆の的であるだけでなく、それに劣らず恐れの的でもあるのです。(20-25)

もちろん神々の中には女神もいただろうが。
宗教が一神教という形に統合されていくと、神は父親らしい形になってくる。
ここで宗教的表象として主に想定されているのは、キリスト教のことである。