ネタバレ考察
「ネタバレ」ということについて考えてみる。
面白かった映画や小説の内容を語る時に、「結末に触れているので先入観なしに楽しみたい人はご注意くださいよ」という注意書きみたいなもの。
私も映画のことか書くとき、もろ結末を言うようなことはあまりしないけれど、一応言いわけ的に「以下ネタバレ」とか書いている。
面白いものを観たり読んだりした時に、やはりそれについて語りたくなる。まだみていない人に勧めたくなる。
「面白いから見てよ」だけでいいんだけど、どう面白いか、伝えたい。でも、そうすると先入観を与えて見る時の面白さが半減してしまうかも、というジレンマがある。
以下、具体的なネタバレで考えてみたい。
<ネタバレ第一段階>
最近読んで面白かった作品はこれ。
恐怖の谷 (新潮文庫) [文庫]
コナン・ドイル (著), 延原 謙 (翻訳)
面白かった、というだけで、厳密にはネタバレ。
できれば、そういう先入観もなしに読んでびっくりしたい。
コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ物といえば超有な古典的推理小説であってすでにいろいろな所からネタバレされちゃっているようなところもあるわけですが、この本については幸いほとんど先入観なしに読めてよかった。
<ネタバレ第二段階>
この小説は全体が大きく二つに分かれている。
前編は、普通のシャーロック・ホームズによる推理物。これだけで独立して結末がある。
正直、この部分は他のシャーロック・ホームズ物と比べても「並」という印象。
「ちょっと無理があるかなあ」という結末でした。
後編は時代を遡り、前編の登場人物の過去をめぐる逸話になっている。
これも独立した話といってよいのだが、これが最高に面白かった。
開拓期のアメリカのある鉱山を舞台に、悪の組織「スコウラーズ」をめぐるストーリー。
<ネタバレ第三段階>
<以下、映画「シックス・センス」のネタバレにも触れています。>
<アガサ・クリスティ「アクロイド殺人事件」のネタバレにも触れています。>
映画「シックス・センス」は「意外な結末」という前宣伝で、私はDVDで見たけれどけっこう最初の方で気がついてしまった。
あんなに「意外」と宣伝されたら、そういう目で見てしまって、実際気づいちゃった人も多かったんではなかろうか。
アガサ・クリスティーの「アクロイド殺人事件」は、意外な犯人で有名です。
私は高校の時に読んで、最後まで気づかず面白かったけど、結末を知ってしまうとちょっと「ずるい」と感じてしまうところもあった。
ナレーターが、嘘はついていないが、重要な何かを語っていない、というのはやはりアンフェアな感じがする。
<ネタバレ第四段階>
で、「恐怖の谷」の結末なんですが。
この手のカラクリがあるにもかかわらず、非常に納得のいく結末でした。
ナレーターは、語っていない何かをクライマックスで明らかにするのですが、「なるほど、そういうことだったか!」と納得。
それまでも勇ましく描写されていた主人公が、ますますかっこよく見えてくるという。
ただ、これは後半だけの独立した話でよかったんじゃないか、という気もしてくる。
前半の話といまひとつ結びつかないというか、後半の話で勇ましかった登場人物が前半のような(時間的には後なんですが)生き方をするかなあ?というのが少ししっくりこなかったですね。
もっとも、これが独立した話だと、シャーロック・ホームズ物でなくなり、この小説を読むこともなかったかもしれない。
まあそう考えるとよかった。
未読にもかかわらずここまで読んでくださった方、いかがでしょうか。
決定的なネタバレはしていないけど、間接的に予想できるようなことを書いてしまった。
それでも興味のある方は、どうぞ。